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一澤帆布『帆布茶団布茶物語』案 |
一澤帆布に至る道 (4)
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さて、弱り目に祟り目で、同じ部屋の隣の壁に掛かっていたのがレオナルド・ダ・ビンチの受胎告知であった。これがトドメとなって閉館までの3時間あまりをこの部屋をグルグル回りながら過ごした。
美術館から出ると抜けるようなトスカーナの青い空である。神々に遣える私の目の前にある広場はまさにカバン市場。
人の世に幸せというのがあるのならこの一瞬を指すのだろう。一条の光に導かれて吸い寄せられるように探しあてたのが、そのカバンであった。高そうである。
値段を聞いたら10万円であった。まからないのか、と言ったら8万までだという。私のやりくりして出せる限界が5万であった。そのように言うとオマエハアホカという顔で見られたので、しばらく名残惜しそうに擦って別なものを探しに出た。
50メートルも行った頃、ムッシュー!と大声で叫んでいるのがいて振り返ったら、さっきのカバン屋が追いかけて来て、その値段でいいという。大喜びでグラッチェ、グラッチェと何度も手を握って手を入れたのがこのカバンである。
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この二つのカバンが私のカバン遍歴の原点であり、またイタリアルネッサンスに滅多打ちにあった事も重なってイタリアカバンコンプレックス、ひいては西洋のカバン文化コンプレックスに陥らせた張本人でもある。
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