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正紀の竜の子日記(2)
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竜の子での1日はお客の朝ご飯を作って、魚屋さんに仕入れに行く。かえって夕飯の下ごしらえをしたり雪掻きをしてお昼ご飯を頂く。午後は何もなければ自由時間でこの冬はひたすら温泉を巡っていました。温泉狩りとでも言うのでしょうか、晴美さんに連れて行ってもらったり、車を借りて一人で行ったり、あるいは他の居候といったりしてほぼすべての自由時間は温泉に行っていました。そして夕方から夕飯の支度をして自分たちも食べ終わって片付けも終わるのは大体9時半から遅ければ10時を回ることもあります。今日の仕事は今日の内に。だからどんなに大変でも洗い物を残したりはしません。でも結局それが毎日いい仕事を続ける秘訣だと感じました。
いろいろ教えてもらいながら仕事にも慣れてきた週末に英治さんが帰ってきて挨拶をすると「ああ、君か。ギターのね。」と言って、そうだろうとは思っていたけど顔も知らない若者が居候に来るのになんとも思わないというか、受け入れられるのがすごいなと思いました。行く前には食事の時は箸の上げ下げから厳しく注意されるし、仕事も少しでも間違うと殴られると聞いていたので少し緊張していたけど初日はあまり注意されることもなく、初めはやさしく後で怖いのかなとか、今日は自分の誕生日だから特別なのかなとかあれこれ考えてしまいました。
それから何日かたったある夜ニコルさんが食事をしに竜の子に見えることになりました。それまでに他の居候も加わっていてずらっとテーブルを囲む光景は圧巻でした。一番若くて入りたての僕は下座でニコルさんが上座と最も遠い位置で話そうにもなかなか話しにくいなと思っていると食事も進んで良い具合になった頃突然、
「おい、若いの。何でおまえは何もしゃべんないんだ。」
「ちゃんと社会に参加しろよ。」
と言われ、突然だったもので驚いて止まっていたら
「何もしないなら腕立て伏せでもしろよ」
とまたよくわからず、ん?!と思っていると
「じゃあ、一緒にやろう」
と一緒に腕立て伏せをすることに。ニコルさんと腕立てした奴なんていないんだろうなと思うと一体自分は何やっているんだろうと思ってしまいました。食事も済んでニコルさんが帰る時に、玄関で
「俺、もっとがんばります。」と言うと
「そうだよ、もっと若いやつがしっかいしないと。がんばれ。」
と言って手を差し出されるとぐっと来て手を差し出すと、一言。
「引っ張って。」
ん?!
この日は本当にニコルさんにびっくりさせられたけどやっぱり偉大だと思い、もっとがんばろうと誓ったのです。そしてこの日、新たな日々が始まったのです。
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