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アラスカの旅、ニコルさんの講演を聞いて考えたこと(2)
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さて、今回グレーシャーベイを行き先に選んだのは、ザトウクジラと出逢える確率が一番高いと言われたからだった。
ザトウクジラの不思議な採食行動、バブル・ネット・フィーディング。それも見てみたいものの一つだった。ザトウクジラはニシンの群れをみつけると、その群れの下まで潜り、旋回しながら泡を出すのだそうだ。その泡はどんどん上がっていき、ニシンの群れの周りに泡の壁を作る。その壁を何故か超えられないニシンの群れは追いつめられて海面近くまで浮上し、そこを下から口を開けたザトウクジラが一気に海面に飛び出し、ニシンを一網打尽に食べるというのだ。何というダイナミックな食事なのだろう。しかも群れでその行動を行う時、ザトウクジラ達はリーダーの下、声を出しながら協力し合うというのだ。
残念ながら今回はバブル・ネット・フィーディングを見ることはできなかったが、10人乗りの小舟で湾を進んで行くと、あっという間にザトウクジラの群れに会えた。夏の最盛期にはもっと多くのクジラが居たのだが、既に南に帰ってしまった群れも居るとのことで、小さな群れにしか出逢えなかったが、でも、本当にちょっと手を伸ばせば届きそうな所に悠然とその大きな動物は泳いでいた。優雅だった。近くでそのくじら達が潮を吹いた時、ちょっと生臭い匂いがした。これがクジラの香りなのか。当たり前だが、生きてるんだ・・・と感じた。海中にマイクを入れてみると、キューキューと鳴き声も聞こえてきた。その内の一頭が、目の前で何度もブリーチングをして見せてくれた。何がそんなに嬉しいのだろう。北の豊穣の海で沢山の食べ物を獲ることができたからなのか、それともただ単に跳ねてみたかったのか・・・。その大きな動物が泳ぐその同じ海で漂っていられることをただ幸せに感じた。
その海域で見ることは珍しいとのことだったが、私たちは何頭かのオルカ、シャチにも出逢った。シャチというと、どうしても海の暴れ者というイメージがあるからか、シャチの背びれが見えただけで、一瞬海が緊張している様に見えてしまうから不思議だ。
3頭のシャチが悠然と泳いでいた。ある一定のリズムで泳いでいたのに、突然その3頭のスピードが上がった様に見え、そして彼等の先に1頭のトドが泳いでいるのが見えた。これはもしかして、シャチの狩りが始まるのか?と、どきどきした。シャチはどんどんトドに近付き、いよいよか!と思った瞬間、シャチとトドはただクロスして行き過ぎてしまった。狐につままれた様だった。全くの勉強不足で知らなかったのだが、シャチにも2つの部族が居る様で、いわゆるトドやクジラの赤ちゃんなどの海獣を襲うグループと、魚しか襲わないグループがあるとのことだった。その時シャチは食事をした後でただ単に満腹だったのか、魚しか食べない方の部族だったのか分からないが、不思議な一瞬に立ち会った様な気がした。
その後、グレーシャーベイ国立公園を後にしてデナリ国立公園に向かった。今回アラスカ行きを8月下旬にしたのは訳があった。一面に紅葉したツンドラを見たかったからだ。そしてあわよくば、そこに初雪なんか降ったら素敵だろうな、と。あいにくデナリ国立公園の深部までバスに乗って行った日は雨と雪が降ってしまった為、キラキラ輝く様な紅葉・・・という訳には行かなかったが、それでもツンドラは赤や黄色に紅葉して、沢山のベリーがたわわになっていた。初めて見たツンドラ地帯。それが本当にどこまでもどこまでも続いていた。そしてそこに降る雪。思った通りの世界がそこに広がっていた。
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