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アラスカの旅、ニコルさんの講演を聞いて考えたこと(4)

大興奮のままアラスカから帰国し、まだその熱が覚めやらない頃、古山先生から送られてきた今回のアファンの森を語る会の案内。

それによると、ニコルさんの講演内容が「イヌイットの人々とのふれあいについて」ということだった。なんという偶然だろう。今回アラスカに行き、なんとなく極北の自然やそこに棲む動物達の一旦を見ることが出来た。でも何かが足りなかった。そこに住んでいる人々、自然と共に生きている人々の暮らしに触れることが出来なかったからだ。でも、ニコルさんのお話しを直接伺うことができ、私のアラスカの思い出にもう1つはっきりとした色が加わった気がした。

厳しく見えた極北の大地も、そこではずっと昔から生命の営みが繰り返され、「手つかずの自然」と言われていた所も、もしかしたら昔々、アジアからアメリカ大陸に渡ってきた様々な人達が通り、カリブーの群れやアザラシの群れを追ったイヌイットの人々が通り抜けていった所なのかもしれない。そう思うと、何かもっと厳しさだけではない、違う感じで見えてきた気がしたのだ。

ニコルさんが最初に北極にいらした頃、イヌイットの人々はまだ伝統的な生活をしていたという。自然と共に暮らしていく中で、きっと守らなければいけない色々なルールやタブーがあり、その様なルールや、生きて行く上での様々な知恵を持った年寄り達が大事にされ、自然の恵みにいつも感謝するという生活だったのかなと想像する。

年寄りが大事にされる社会は何か全うな社会の様な感じがする。ちょっと前の日本もそうだったのだろう。私が住んでいたアフリカのセネガルもそういえばそうだった。

20人の家族がいたら、その内働き手は1人か2人。貧しい暮らしかもしれないが、今の日本の様に一人死ぬ様な寂しいお年寄りはいない。イスラム教という宗教のせいか、セネガルの精神「テランガ(英語のホスピタリティの意味)」のせいか、食べ物はみんなで分け合って食べるから餓死したということもあまり聞かない。年寄りは「神に近い存在」だから大事にされる。

統計上の平均寿命は短いが、それは子供の死亡率が高いからで、90歳や100歳を超える年寄りも沢山居る。そして、太鼓の音がすれば、みんな笑顔で踊り狂う。

セネガルに居た頃、豊かさとは何だろうといつも考えされられた。経済的には日本の方が確実に豊かだが、心の豊かさは?社会の成熟度という意味ではどうなのだろうと。こんな底抜けの笑顔の子供、最近の東京で見たかな・・・と。

そして今回、文字を持たない文化のその豊かさにもまた心打たれた。マンモスの話しである。8千年も前のことなのにいまだに生き生きと語り継がれてきたその話し。志ん弥師匠ではないが、昨日それを見たかの様に話して下さるニコルさんの話し振りにも感激した。

あの時のその場の雰囲気、ニコルさんの声の調子、表情、全てを覚えていたいと思った。

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アファンの森で語る会


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