町工場二階空目薬工房

KOICHI FURUYAMA


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C.W.ニコル講演「イヌイットと私」(2)

僕はその時、大学に行く奨学金が取れてたんですよ。でも「探検に行きます。」と言ったら、親は猛反対ですよ。でも僕から見たら、「北極探検か、誰でも行ける大学どっちが大事か・・・。」と。もうものすごく親と喧嘩した。カナダに行く船の切符は40ポンド。私はアルバイトして50ポンド貯金してあったんです。問題はパスポートがない。僕は17。親の許しがなければパスポートが手に入らない。だからおやじのサインを一生懸命練習して、1週間でおやじより上手になって、パスポート手に入れて、切符買って、それで親に「ちょっとキャンプに行ってくる」とメモを残して、北極に行っちゃった。8ヶ月。その位、僕、行きたかったんですよ。

北極というと、arctic circle の上、24時間の昼間、24時間の夜を経験する地域。それは一つの定義ね。もう一つは、ツンドラ。木の無い所がbiological arctic。

先生が選んだ所は、本当は北極よりもちょっと南だった。ここにはケワタガモがすごく沢山居る。アンガバ湾(Ungava Bay)。そこに行ったんですよ。

ここにはイヌイットが住んでましたね。その時は1958年ですから、まだイヌイットはカヤックで猟をしてました。僕が思った通りでしたね。たくましい、楽しい、すごく素敵な人々。冬は犬ぞりで旅をして自分の獲物を獲ってましたし、女性達はすごく素敵な服を作って、靴を作って。

それから子供達はもう小さい時から石投げの練習をしてるんですよ。そして10歳からカヤックに乗って、11歳から大きな鉄砲を使ってるんですよ。もう憧れの民族だったんですよ。僕は行く前に先生から、コクソワという川を、氷が割れる前に渡らなければならないと、言われてたんですね。英語とイヌイットの言葉の字引きをひいたら、コクッスは「でかい」、ソワは「川」。つまり「大きい川」。だから僕は想像したんですね。テムズ川位かな?セバン川位かな?と。

我々が渡る場所は海から100km離れているから、幅は100mかな?と。行ってみたら、幅は2kmだったんですね。コクソワはとにかくでっかいの。

先生は、息子が病気になったので、17歳の僕を先に行かせたんです。1ヶ月、一人で。金もくれないのよ!膨大なテントとか色んな物があって、100m位だったら我々が持っていた2人乗りのカヤックで行ったり来たり出来ると思った。だけど、僕が着いた時には2m以上の氷が張ってて、それが割れ始めて、もう動いてるんですよ。だから僕が川にちょっと出たら、イヌイットが走って「もうダメ、ダメ!」と。だから、渡れないの。どうしても渡れないの。金がないの。それで、イヌイットと一緒に1ヶ月暮らしたの。もう楽しかったですよ。北極はとにかく、島国の英国人の男の子の想像をはるかに超えてた。こんな自然があるのかと。

英国に帰って、おやじは許してくれたけれど、母は相変わらず。あなたもこれから大学行かなくちゃいけないと。でも、もう18歳だったからね。英国では18歳で親の許しはいらないです。だから18歳でまた北極に行ったんです。

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