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C.W.ニコル講演「イヌイットと私」(3)
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これはまたすごい所があった。サニキロワック(Sanikiluaq)(Belcher island?)。この島の長さはだいたい120kmですね。細い所で1kmしかないです。小さな島が沢山ある。
1930年まで白人はこの島のことを知らなかったんです。ただ、たまに大陸に不思議なイヌイットが来ると記録があったんですよ。そのイヌイットは2人乗りのカヤックに乗っている。それは他にはないんですよ。そのカヤックに6人が乗るんですね。つまり2人が漕いで、後は中に入って居るんです。それでアザラシのアノラックじゃなくて鳥の皮、ケワタガモの首の部分のアノラックだったんです。
雄は、胸は白に近いピンク、頬の辺りはグリーンと黒。柔らかくて、暖かくて、すごく美しいと記録があったんですよ。他の大陸のイヌイットは彼等を怖がってた。でも茶化してたんですね。そこは世界で一番ケワタガモが集まる所だと。白人が分かったのは、ナヌークという映画を作ったフラハティ(Flaherty)が見つけたんです。その島に行った時、本当の大昔のイヌイットの生き方でした。
クリスチャンは表面的には入っていたけれども、シャーマニズムがそのまま。僕はその時に、ヒットコヤックというシャーマンに会ったんですよ。ヒットコヤックというのは蚊という意味です。彼は、本当に人の心が読めたんですね。それである時、氷が入ってなかなか獲物が獲れなくて、みんな心配したの。それは夏でした。ティピというテントにみんな集まって、ヒットコヤックが真ん中に座って、みんなが周りに座る。
そこに白人は入れないけど、男の子だからいいよ、お前は、と。そしたらヒットコヤックが太鼓を叩き始めたんですよ。「アイヤー、アイヤー、アイヤー。」それで、月へ飛んで行くと言うんですよ。彼は年寄りだけど太鼓叩いて汗びっしょりになって、上半身裸になって踊り出したんですよね。これはちょっと、今思い出しても鳥肌が立つ。
それで、「今からわしは行くから、お前ら見るな!」と。それでみんな頭を下げるんですね。で、羽の音が我々の頭の上でするんです。ウーウーウー。後で分かったんですけどね。これ位のクジラの骨をプロペラみたいな形にして、先をセイウチの牙で研ぐの。それを長いひもに付けて回すんですよ。それをみんなの頭の上で回してるから、もし顔を上げたらぶつかってやられるんですよ。みんなしーんとしたら、遠くから、テントの外から、「アイヤー、アイヤー、アイヤー」と、声が回ってるんですよ。見ちゃいけないけど、フードをあげてちらって見たら、彼は真ん中に居るの。でも声は外でしてるの。
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