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C.W.ニコル講演「少年時代」(2)
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父は本当は偉い家の息子だったんですよ。母はその家に働きに行って、父と母は駆け落ちをして、それで僕が出来たんです。母は、すごい美人だったんですね。私は1940年生まれで、その頃ちょうど戦争が始まって、私の父は戦争に行って帰ってこなかったので、私と母の2人だけだったんです。戦争の時は、アメリカやカナダとは違って、食べ物は限られて、薬は限られて、色々と大変だったんです、英国は。それで僕はリュウマチ熱という病気にかかったんです。小さい時はギプスをはめてて、心臓が悪いと言われて、スポーツは出来ない子だったんですね。母はウェールズには仕事がない、英国じゃないと仕事が出来ないと、僕を連れて行くんですよ。
いじめられる為に連れて行ったという感じがありますね。あの当時の英国は、とても残酷な国でもあるよ。紳士の国というイメージがあるけど、Don’t believe it!とても残酷な国です。だから大きな植民地を持って、どんどん民族を支配しようとしてたんですね。とにかく、僕は母が仕事をしている所に居ましたけれど、とにかくウェールズに帰りたかった。ウェールズに帰してくれないと、もうぐずる。そして、ウェールズに帰らないと家出したりしてました。バスに乗ってウェールズに帰ったんです。ウェールズがどこにあるか、みんな分かってるな?オーストラリアほど遠くないけど、遠いよ、あの当時は。電車やバスで1日かかりました。
そこで、森との愛情が始まったんですね。学校に行くと、本当に毎日が地獄でした。もう「どうして学校に行かなくちゃいけないのか。」と、毎朝ぐずってました。だから、母は大変だったよ。仕事行かなくちゃいけないのに、俺はオートミールを早く食べない、顔洗わないとかね、ソックスをなくしたとかね、もうそんなことばっかりだったんですよね。だから、ウェールズに帰ると多分母はほっとしたんですね。
私のおばあちゃんは、魔女みたいな人でした。彼女は、教会に行ったことがないんじゃないかな。ものすごくキリスト教が嫌いだったの。あの時代は口では言えなかったけど。ぶつぶつ・・・って言ってました。つまり、古代のケルトの真理はまだ持ってましたね。「でも、キリストはいい人だったらしい。」とかね。「神の息子?あなただって、神の息子。みんな神の息子だからね。」って。面白かったね。ある夏、僕が5,6歳だったかな、彼女の所に行ったら、「あなたのぐずりは、みんな飽き飽きしてるよ。強くなりたいの?」と、言われました。「なりたい。」「じゃあ、なれる方法を教える。私の言ったことを守ってくれる?」「はい。」「誰にも言っちゃ駄目ですよ。」「はい。」彼女小さかったけど、怖いんですよ。
妖精の国というのがあったんです、家から1マイル足らずね。小さな沢に綺麗な川が流れて、原生林のかけらがあったんですよ。そこは昔のケルトの聖地の森だったらしいね。だから「妖精の森」という名前を後で付けられた。そこに行って、大きなオーク、ウェールズ語でドゥールって言うんですけど、日本で一番近いのはミズナラですね。それをみつけて、その木を抱いて3回「兄弟になって下さい。力を貸して下さい。」と、木の魂にお願いするんだと。キリスト教を教会や学校で習うと、「魂は人間しかない。」とか、「動物には魂はない。」とか、「木には魂はない。」とか言われるんですよ。ばあちゃんは「違う!生きてる者は、みんな魂がなければどうやって生きてるの!」って、すごく合理的な事を言ってたね。
とにかく、「やって。」と。そして、「誰にも言っちゃいけません。犬を連れてってもいけません。」と。僕のことを守ってくれたコリー犬が居たんですよ。どこ行っても、コリー犬が心配だから付いてくるんです。だから、「犬を連れて行っちゃ駄目。一人で行きなさい。」と。そして僕は行きました。そしたらばあちゃんが、「行ったね?どんな木だった?」と聞くから、話しをしたら、「じゃあ明日も行くのよ。毎日行くのよ。でも、誰にも言っちゃ駄目よ。」と。それで僕は1週間位、嫌々歩いて、石の塀を超えて、怖い森の中に入って、木をみつけて、ぶるるる・・・としながらも、「力貸してくれって・・・」ってお願いしました。
それで1週間位したら、ばあちゃんが「あんたは本当にがみがみの多い、口が多い子だから、皆あんたの事嫌いになってるよ。だから、何か文句があるなら木に言いなさい。私もじいちゃんも聞きたくない。おばさん達も聞きたくない。木に言いなさい。出来るか?」と。それで僕は木に言ったね。もう遠慮しないで言ったんだ。「象に乗って学校に行って、先生をつかまえて、ぐちゅぐちゅって潰したい!」とかね。そういうこと言ってましたね。しばらくしたら、ばあちゃんが、「木に上ってみ。」って言うんですよ。でも僕の母は、小さなリンゴの木に上ろうとしても、「危ない、危ない。」とずっと言ってましたから、「いいの?」と。「いいんです。上ってみ。」と。オークの木は古い木ほどごつごつしてるから、上りやすいんです。ちょっと上ってみると怖いからすぐ降りてくるでしょう?でも、ばあちゃんに言われて2ヶ月木と付き合ったですね。「最後に木のてっぺんに行って、木と同じ息をしなさい。」と、言われたんですね。「木は息をしてる。てっぺんの方が一番力のいい息があるから、そこに行って息をしなさい。」と。
それで2ヶ月したら、僕は遊びたいし、10歳までストをおこして字を覚えてなかったから、母の妹のおばさんに漫画を読んで欲しかったし、木の所まで走って行って、サルの様にパパパパーと上まで行って、さっと降りて、「お願いします、お願いします、お願いします。」って3回お願いして、さーっと走って帰って、宿題を終らせた。最初はゆっくり歩いてたよ。でも、2ヶ月で木から気をもらった。英国には、ウェールズと違って平地はあっても森はほとんどない。ただ、近くに貴族の猟場があったてそこに森があったんですね。その猟場は普通入っちゃいけないんですけど、僕は小さいからね。
森に一人で入ることに慣れたから、英国に戻ってからも、森に入る様になったんですね。あれは僕を一番変えたと思うんですね。
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